不動産投資の迷惑電話営業と、個人情報の第三者提供許諾についての個人的まとめ
先日、見に覚えのない番号から電話がかかってきた。僕は私用の携帯電話を仕事の連絡用としても使っているので、仕事の用件かと思いその電話に出てみた。
僕の予測は外れ、その電話の主は不動産投資勧誘の営業電話だった。話の流れは概ね以下のようなものである。
会話のやり取りはこんな感じだった
以下、赤文字が僕、青文字が営業マンである。
「はい、〇〇です」※このようなケースがあるので、社名を名乗らず名前だけにする。
「お世話になっております。株式会社ーーーーの××と申します」
あ、不動産営業っぽい。名前は伏せるが、トラストとかキャピタルとかファイナンスとかプロパーとか言ってる時点でもうだめだ。電話を取った時点で僕の失敗である。
「はい、お世話になります」
ビジネスマナーを忘れない僕えらい。
「〇〇様の携帯電話でお間違い無いでしょうか」
「はい」
「この度は収益性の高い投資用マンションのご案内をさせていただいておりまして~…」
「興味がありません」
僕も営業だから分かっている。電話の主にも営業ノルマがあるのだ。だが僕は不動産投資をしようとは思っていないし、その意味で営業プロセス上の見込み顧客ではない。だから僕に営業されても無意味なのだ。彼には、僕以外の見込み顧客にその営業リソースを使ってほしかった。
しかしこの配慮は無駄になることになる。
「もしかして〇〇様にはこのような電話がかかってきますでしょうか」
「ええ、率直に言って迷惑してます」
会話しちゃダメだった。反省。「お答えできません」とかでもよかったかな。
てか、こういうのって反響営業のほうが良くない?いきなり電話かけてきたやつに、いくらだか相場わからんけど何百万何千万の金出さないでしょ。Web広告出してLP作って問い合わせフォーム作るほうが、リストもクリーンで見込み顧客しか入ってこない分、人海戦術で電話かけまくるより安上がりだと思うけど、そんなことないのかしら。
あるいはその物件か不動産投資証券がよほど魅力がなくて、Webでは集客できないほどの品質だから、数を増やして当たればラッキーくらいのノリで営業かけているのかもしれない。どっちにしてもそんな不動産に投資はできないですわね。
「しかし私共は他社と違って利回りが~…」
え、まだ続くのかよ。
「いや、だから興味がありませんと言いました」
「どうか話を最後まで聞いてください」
「いやお客様かと思って出てみたら違うし、今Web会議中なんでマジでやめてください」
僕はメイン担当じゃないのでただ出席していただけだけど、マジでWeb会議中だった。いくら会議の出席者から分からないからって、いつまでも中座していていいものではない。
「じゃあ会議はいつ終わりますか?その後にお時間を…」
僕は怒りを覚えた。穏便に後腐れなく、かつお互いに精神的ダメージが残らないようにお別れしようとする僕の配慮は一顧だにされなかったばかりか、僕に対して他の有象無象と同じような営業トークをぶつけてきたわけだ。もうこの男に礼儀などは必要ない。僕は淡々と質問した。
「話は聞かないし要らないと言っている。そもそもこの電話番号と氏名はどこから入手したんですか?御社には私から提供していませんよね?」
「…名簿業者から入手しています」
このあたりから営業マンもあきらめモードに入ったようだ。先程までよりも声のトーンが低い。
「何という会社ですか?」
「★★★★★です」
ご丁寧に教えてくれたので、ここは営業マンGJと褒めておこう。Googleで検索すると、それっぽい企業がヒットする。
「わかりました。御社名とお名前をもう一度教えて下さい」
「株式会社ーーーーの××です」
「わかりました。××さんにお伝えしますが、御社からの電話連絡は一切お断りします。」
「承知しました。弊社からはご連絡差し上げないようにします。しかし〇〇様の名簿をお持ちの別の企業様から連絡が行くことがあります」
ふむ、物分りがいいではないか。その物分りの良さをもう5分前に発揮してくれていたらもっと評価したものを。
「それはそれでこっちで対処しますからいいです」
営業をかけられた側が一方的に損をする
という流れのコミュニケーションがあり、結局10分ほどもWeb会議を中座してしまった。僕には大変後味の悪いものになった。この僕にいきなり電話をかけてきた上に、さらに怒りを覚えさせ、不本意ながら少々強めの言葉を使わざるを得なかった。電話相手に対しての礼儀を維持するという僕の努力に対してすら非協力的であり、僕としては穏便に丁寧にお断りをしたかったのにそれも叶わなかった。
僕は他人に期待しない。しかしその僕に、僕の配慮を受け入れてくれるものであると期待させ、それを裏切るという暴挙も許容しがたいものがある。そもそもこの男が僕に連絡をしてこなければ、僕がいちいちこのようにストレスを感じることもなく、穏やかな仕事終わりの夜を迎えられたはずなのに、少々鬱々とした気分を味合わされている。
そして営業マンの方は、ただただ名簿の1リストに連絡したら断られたという事実のみを記録する。僕の礼儀や配慮は、一切彼には届いていないのだ。何とも言えずやるせない。僕があれこれ配慮した分、どうも僕が一方的に損をしている。この非対称性が、僕が不動産営業の電話を嫌う理由である。
名簿が出回るような心当たりがない
さて、ここからが本エントリの本題である。僕の電話番号は、ビジネスマンデータとか呼ばれていて、ある実在の業者の名簿に記載されていることが分かった。
まず、不思議なことがある。僕の氏名や電話番号が僕の知らない名簿業者にあるということは、僕が登録した氏名と電話番号を、第三者たる名簿業者で利用することを許諾したことになる。その許諾はいつ行われ、あるいはどの企業に対して許諾したのか?生活をする上で様々なサービスを利用しているから、正直言って全く心当たりがない。
そして不動産営業の業者が購入するということは、おそらくそれに見込みのある年収や所属している企業規模、年齢などの情報が含まれているはずだ。年収?年収を知っているのは転職サイトくらいだが、その中にも何年か前に個人事業や外資の得体のしれない業者を(当時の僕が世間知らずであったために)使ったこともあったので、そこから流れたのかもしれない。
次回かかってきたらそのことを詰めてやろうと思っている。当該電話番号は着信拒否にしてあるし、今回の不動産営業会社には僕の名簿は削除してもらうよう言い伝えたので、オプトアウトが成立している。そういうわけで別の企業からの着信を少々期待しているのだが、本件以来一度も連絡が入ってこない。オプトアウトが名簿業者まで及んだのかどうかは定かではないので、またタイミングを見て連絡が来るかもしれないが。
改正個人情報保護法に定められた許諾の取得義務
さて、ここからは2020年改正個人情報保護法に関連する僕の見解である。僕は法律の専門家ではないので、ただ単純に調べて解釈したのみであるため、以下の内容については一切の正確性を担保しないし、責任を負わないことを了承されたい。
2020年改正個人情報保護法は、2022年6月より前に全面施行されるのであるが、その概要資料にはこのようなことが書いてある。
https://www.ppc.go.jp/files/pdf/200612_gaiyou.pdf
提供元では個人データに該当しないものの、提供先において個人データとなることが想定される情報の第三者提供について、本人同意が得られていること等の確認を義務付ける
利用停止・消去等の個人の請求権について、不正取得等の一部の法違反の場合に加えて、個人の権利又は正当な利益が害されるおそれがある場合にも要件を緩和する。
保有個人データの開示方法について、電磁的記録の提供を含め、本人が指示できるようにする。
個人情報保護委員会の見解によれば、「「名簿業者」又は「名簿を売買する行為」が個人情報保護法で禁止されているわけではありません。」と説明されているため、名簿業者というのはれっきとしたビジネスの1つとして認められている。だから名簿業者が名簿を取り扱うこと自体は問題ないのだが、そうするとその名簿が、名簿業者への業務委託や情報提供の許諾を個人から確実に受けているかが問題になる。
本人の同意が得られていない場合は、その個人情報を使ってビジネスを行うことはできなくなる。よって名簿業者は、名簿を取り扱う前に、その名簿に対して個人情報の提供の許諾を個人から得ていることが担保されていることを確認する必要があるだろう。
僕の想定では、例えば得体のしれない懸賞とかに応募した際に登録した個人情報が、(楽して儲けようとする情弱リストとして)名簿業者に流通していると考えているが、その懸賞にしたって、「不動産投資などの案内を許諾する」ことを宣言して個人情報を収集したりしないだろう。実際のところはもう少しぼかして「お客様に有益と判断された情報を提供する目的で、第三者に個人情報を提供することがある」のような表現にするはずだ。今後僕たちは、このような電話攻撃に煩わされないように、個人情報を提供する前に、プライバシーポリシーやサービス利用規約を注意深く確認する必要がある。
名簿業者からオプトアウトする方法を考える
さらにここからオプトアウトや個人情報の利用停止、消去、または開示についての考え方について考えていくが、以下については僕の想定を記載したものであり、全く検証はしていないので、その点は了承されたい。
オプトアウトについては、名簿業者がオプトアウトについての連絡先を公開しているので、名簿業者が特定できたならば、そこに連絡して個人情報の削除を請求すればいい。
しかし懸念されるのは、その場合の本人確認はどのように行うのか?誕生日や住所などの個人情報をすでに名簿業者は持っていて、それと照合するのかもしれないが、身分証明の証拠として運転免許証のコピーを要求されたりして、さらに個人情報を提供してしまう恐れはないのか?またそもそも本人が許諾をしていない認識のまま名簿業者に個人情報が流れたならば、損失を被っているのはむしろ個人のほうであり、その個人がなぜパケット通信料や通話料を払ってそのような請求をかけなければいけないのだろう?
もう1つは、名簿業者に対して保有個人データの開示請求を行った場合、どこまで答えてくれるのか?どのような内容の個人情報を保有しているのかもそうだが、個人として把握したいのは、その個人情報がどこから入手されたかである。第三者提供を許諾した覚えのない名簿業者に個人情報を流した不届き者を特定してやる必要があるし、その不届き者に対して文句の1つも言ってやらなければ気が済まない。
しかして、仮に「そのデータは管理されていないので回答できない」という旨の回答が得られた時、個人としてはどのように行動すればいいのか。僕たちはさらに考察する必要があるし、もしかしたらそのうちガイドラインか何かで定められるのかもしれない。
そもそも不動産投資営業の連中が僕にこんな電話をかけてこなければ、僕はここまで怒りを燃やすことはなかった。僕はあの仕事終わりの静かな夜を破壊したあの電話の主を絶対に許さない。その怒りを忘れないうちにまとめたのがこのエントリである。迷惑な電話営業に怒りを覚えた諸君と、その怒りの共感の表明になれば幸いである。