戸隠神社は、最近注目されているパワースポットの1つである。
ことの始まりは、長野県を走るしなの鉄道の115系が置き換えられ、引退するというニュースを耳にしたことだった。これは乗り納め、撮り納めをしなければならない。せっかく長野まで行くのであれば、何か目的地が必要だ。神社仏閣建築を愛する僕は、その目的地を、パワースポットとして注目されている戸隠神社と、長野駅からほど近い善光寺に設定した。
戸隠神社とは
バス車窓から眺める戸隠山。
その大いなる歴史と、奥社に続く参道に植えられた巨大な杉並木が、パワースポットとされる所以である。
戸隠神社へのアクセス
戸隠神社へは、マイカー以外で行く場合は、長野駅からアルピコ交通のバスで向かうのが一般的である。バスは1時間に1本程度が発着する。バスの系統番号は「70急行」、便名はループ橋経由戸隠線。ループ橋とは、道中で通る巨大なループ橋である浅川ループ橋のことを指す。ちなみにこの浅川ループ橋付近には、日本最古の油田である浅川油田の油井跡が現存している。
ルートは、長野駅を出発後善光寺方面に向かい、その後住宅街を経て浅川ループ橋を渡り、飯綱高原を経て戸隠に至る。行程の半分は山道となるので、乗り物に弱い人は、バスの後部座席には座らないようにしたほうがよい。観光路線なのに、使用されるバスが観光バスではなく普通の路線バス形式であるのはどうかと思うが。
長野駅から戸隠方面までは1時間ほどかかるので、事前にトイレなどは済ませておくと良い。また、周囲は1000mを超える標高であり、周囲では冬期にスキー場が運営される程度には冷え込みが厳しいので、注意しよう。
アルピコ交通のフリーパスを入手しよう
さて、戸隠神社へ向かうバスは、長野駅善光寺口から歩道橋を渡ったところにある7番乗り場から発着する。
この7番乗り場には、アルピコ交通の営業所が設置されており、そこできっぷを購入することになる。自動販売機で往復のバス乗車券を購入することもできるが、もし善光寺に立ち寄りたいのであれば、窓口に申し出て「戸隠高原フリーきっぷ」を入手しよう。大人2600円で5日間有効。しかもこの1枚で、長野駅~戸隠方面~善光寺~長野駅を1周できるので、お得感がある。
戸隠神社を効率よく見て回るには
戸隠神社は、戸隠奥社、九頭龍社、戸隠中社、火之御子社、戸隠宝光社の5社からなるが、立地的には戸隠奥社と九頭龍社はほぼ隣り合わせであり、一方で戸隠中社、火之御子社、戸隠宝光社はそれぞれ歩いて10分ほど離れている。また、戸隠奥社入口のバス停から戸隠奥社までは片道40分かかり、戸隠中社~奥社間はバスでは4分だが、歩くと1時間はかかる距離にある。バスの本数も1時間に1本と少ないので、時間を考慮する必要がある。参考までに、僕のタイムスケジュールを記載しておこう。
8:27長野駅→(バス)→9:27戸隠中社→(徒歩)→火之御子社→(徒歩)→10:44戸隠中社→(バス)→10:48戸隠奥社入口
12:27戸隠奥社入口→(バス)→13:23善光寺→(バス)→長野駅
戸隠宝光社
5社あるうちの最初の1社。御祭神は天表春命(あめのうわはるのみこと)。縁結びや安産の祈願のご神徳があるという。
270段の階段をひたすら登った先に社がある。
階段から社殿を見上げる。
きらびやかな神輿が公開されている。
社殿の右手からは遊歩道が伸びており、火之御子社、中社へと続く。晩秋の頃であったため広葉樹林の葉はすべて落ちてしまっていたが、夏場に訪れれば、高い標高も相まって絶好のハイキングルートになりそうだ。
火之御子社
2社目の火之御子社。御祭神は天細女命(あめのうずめのみこと)。その名の通り火防のご神徳のほか、縁結びや開運、芸能成就のご神徳もあるらしい。
火之御子社鳥居。
火之御子社から戸隠中社までの移動も、同じようにハイキングルートを通るのだが、矢印どおりに進むと、途中で住宅地を通りかかる。不安になるが、矢印は正しいので、信じて歩こう。
戸隠中社
3社目の戸隠中社。三本杉と呼ばれる巨大な杉のご神木が有名。
中には手のひらや全身を押し当てて、御神木のパワーをその身に受け取っている人もいた。確かにその巨大さを目の前にすると、そのパワーを感じたくなる。
もはや人智など及ばぬほど巨大に成長し、悠久の時を生きてきた巨木に神性を感じるのも、無理からぬことではない。
戸隠中社社殿。
小さな滝にも神性が宿る。
社殿の奥にあった小さな祠。
戸隠中社の駐車場から雪化粧の北アルプスを望む。ここからはバスに乗って戸隠奥社を目指す。
戸隠奥社・九頭龍社
いよいよ戸隠神社の本体である戸隠奥社へと向かう。
戸隠山の鋭い岩峰が目の前にそびえる。多くの修験者がここで修行し、その神霊力をこの山に与え、それが今パワースポットとして僕たちに力を与えてくれる。ストレスの多い現代に生きる僕たちには、そういう大いなる力を活力として取り込む必要がある。そんな思いを持っているかどうか知らないが、奥社への参道はこれまでの3社のどれよりも混んでいた。
奥社参道の入り口にある大鳥居。この先にある杉並木を目指す。
近くにはせせらぎがあり、澄んだ冷たい川が緩やかに流れている。
緩やかに登ってはいるが、スタスタと歩いていける。
参道の中間地点にある随神門。この先があの有名な巨大杉の並木である。
随神門をくぐり抜けてすぐの一葉。周囲10mはあろうかという巨大な杉が立ち並び、圧倒される。随神門をくぐり抜けた人々はみな「おぉ」と感嘆の声を上げる。
何か住んでいそうな杉は、ご神木としてしめ縄が巻かれていた。
小さな滝にも榊が納められ、神性の依代となる。
途中にある小さな石仏。神社なのに仏とは?神仏習合の名残なのだろう。あの高野山だって鳥居の奥に五輪塔がある程度には習合しているから、何も問題ない。
さて、歩いていると、参詣者の口数が少なくなってくるのに気づくだろう。実はこの素晴らしい巨大杉並木は500mほどしかなく、あとはほとんど登山のようなもので、上り坂に次ぐ上り坂で急激に高度が上がるとともに、容赦なく参詣者の体力を削っていく。
晩秋の季節だからだが、僕たち参詣者を苦しめたのは実は上り坂ではなく、参道の凍結であった。雪が踏み固められ、それが高い標高による低温のために氷となってしまい、僕たちの靴の摩擦係数を限りなくゼロに近づけた。僕も何度か転倒しそうになったし、非常に危険なので注意して歩こう。
参道を登りきったところにようやく現れる九頭龍社。御祭神はその名の通り九頭龍大神で、戸隠山における土着的な山岳信仰の守護神である。
戸隠神社奥社に並ぶ参詣者。奥には戸隠山の岩峰が間近にそびえる。
戸隠神社奥社の社殿。御祭神は天手力雄命(あめのたじからおのみこと)。武道や勝負事にご神徳があるらしい。
御朱印も販売しているのだが、あまりに列が長いので僕はパス。次の目的地である善光寺に向かうため、バス停へと急いだのである。