MRJがファンボロー航空ショーで展示飛行へ!商業的失敗のリスクが未だくすぶる
MRJはとうとう展示飛行の段階を迎える
三菱航空機が開発を手がけるリージョナルジェット「MRJ」は、イギリス・ロンドン近郊で行われるファンボロー航空ショーに出展される見通しだ。
三菱航空機の水谷社長は、競合であり次世代機のエンブラエルE195-E2が2017年6月のパリ航空ショーにおいて1機を持ち込み、地上展示と展示飛行を実現したことに触れ、「そういうふうにやれるのかどうか見極めが必要」とコメントした。
水谷社長のコメントを読む限り、「見極める」とのことなので、「展示飛行を実現する」とは断言はしていないと僕は思う。そういう意味でAviation Wireの記事タイトルは先走りすぎている感はあるが、どちらにしても三菱航空機としては、是非展示飛行を実現させたいという思惑があるだろう。
アメリカの空を飛び回るリージョナルジェット。機体はエンブラエルE-175。
そして恐らく、商業的にもこの展示飛行は実現されなければならない。既にエンブラエルE195-E2は昨年の時点で展示飛行を完了させているのに対して、MRJは同じ航空ショーで地上展示のみとなった。このことは、まだ飛行展示の段階に進めないという印象を与え、開発スピードが遅延しているという事実を航空関係者が実感する結果となった。
MRJが展示飛行を実現すれば、エンブラエルE195-E2の展示飛行から1年遅れとなる。三菱航空機としても、昨年の開発状況から進んでいないという印象を与えることは避けたいはずなので、そういう意味でもMRJをきちんと飛ばしてくるだろう。
当のMRJは、アメリカ・アリゾナ州で高地飛行試験を実施し、型式証明取得に向けて様々なデータを揃えている真っ最中である。設計の見直しなどで納入時期が2020年半ばまでずれ込んだが、それ以後大きなテストの遅れの情報は入っていないことから、現時点では順調ということなのだろう。
本当は今頃全国を商業飛行していたはずだったが。
一方で、三菱重工が、MRJが未完成のまま航空事業を撤退すると見通す記事もある。しかしこれはあくまで三菱グループ内の三菱重工のプレゼンスが低下していることを根拠としている。MRJは、少なくとも未完成では終わらない。完成もするし、商業飛行もするだろう。それが商業的に成功するかは別にして。
商業的失敗のリスク…MRJプロジェクトの国有化の可能性はあるか
ただし、一方で3000億円(2018年5月9日修正:6000億円)にものぼる開発費用の回収については、結局手付かずのままである。結局、キャンセルはないが新規獲得もないという状況である。旅客機を市場に投入するのだから、当然販売して終わりではなくて、メンテナンスや保守、改良などの機体関連サービスを継続していかなければならない。販売した以上、それだけのキャッシュアウトが、本機が運用されている間発生し続けるわけだが、そのあたりのキャッシュフローがいまいち見えてこない。しかも新規獲得がない以上、損益分岐点も低下しないし、あるいは機体関連サービスに充てるキャッシュはどこから入ってくるだろうか。
僕が最も危惧しているのは、そうして債務超過に陥った三菱航空機に対し、銀行や三菱重工が(株主の反対などにより)支援を減少、あるいは停止することである。そうなってしまえばMRJ関連のメンテナンスサービスは停止してしまうことになり、航空会社が窮地に陥ることになる。そうなっては困るので、日本政府による三菱航空機への資金援助がなされ、結局僕たち国民の税金でMRJプロジェクトを救済する事態になる。
ぜひそうならないでほしい。そして、税金を使った救済は断固反対である。なぜならMRJプロジェクトはあくまで三菱重工グループという民間企業体の一事業であり、それが成功しようが失敗しようが、正直僕の生活に何も影響しないからである。影響しないということは効果がないということであり、関係ないということであり、僕の税金を僕の関係ないところのために使ってほしくない、という理屈である。
果たして僕は考えすぎだろうか。引き続き、三菱重工グループ全体の財務状況について、アンテナを高くしておく必要がありそうだ。
※2018年5月9日追記:三菱重工が三菱航空機へ出資し、資本増強をはかることが発表された。
これによって当面三菱航空機は操業できるわけだが、それにしてもMRJ開発費用が6000億円にも達していたなんて。本当にこれどうやって回収するんだろう。