九七式艦上攻撃機は現存していない
太平洋戦争初期~中期にかけての日本海軍の主力攻撃機であり、真珠湾攻撃やその後に発生した多くの作戦で多くの戦果を上げた九七式艦上攻撃機であるが、大変残念なことに1機も現存していない。僕が参加したアメリカの航空ショーCommemorative Air Force(CAF)では、真珠湾攻撃をテーマにした「TORA! TORA! TORA!(トラ・トラ・トラ)」というアトラクションがある。日本軍機として登場する機体は全てレプリカであるが、日の丸の識別マークをつけるなど、塗装はそれなりに見えるように作っている。
真珠湾攻撃のアトラクション~TORA, TORA, TORA!~
TORA! TORA! TORA!の命名の由来は、「ワレ奇襲ニ成功セリ」を意味する「トラ・トラ・トラ」で、当時の旧日本海軍が用いた暗号である。
ナレーションが入る。
「目を閉じて想像してください、ハワイの美しい景色を、70年前の12月7日、静かで平和な日曜日の朝7時55分、突然日本海軍の飛行機が現れ、攻撃してきたのです、ほら、目を開けて、皆さんの上に飛んでます」
さらに当時のルーズベルト大統領の演説が流れる。「美しきハワイの真珠湾が日本海軍に攻撃されて、たくさんの被害が出た、自由と生存のため、日本に宣戦布告する」。
僕はこの時点ですごく居心地悪かった(けど多分誰も僕が日本人だと思ってないと思う)。
編隊を組んだ日本機が現れる。
そして、零戦、九七式艦上攻撃機、九九式艦上爆撃機に扮した単発機が編隊飛行とアクロバティック飛行を見せる。急降下爆撃をイメージしているようで、急降下と急上昇のタイミングに合わせて爆発が起こる仕掛けになっている。
九七式艦上攻撃機のレプリカ。胴体下に800kg航空魚雷を搭載する。
同じく九七式艦上攻撃機のレプリカ。こちらは本アトラクションで実際に飛行した機体。胴体下に800kg航空魚雷を搭載する。
左に見切れてしまっているのは、九九式艦上爆撃機のレプリカ。(写真を失念した)
零戦役の機体で、正体はT-4テキサン練習機。航空母艦「赤城」搭載機のように、エンジン以外の全面が明るい灰緑色で塗装されている。ピトー管が右翼についているが、零戦のピトー管は左翼に装備されている。
戦勝国であっても、戦争が悲惨であることを語り続ける
「真珠湾では400人のアメリカ人が亡くなった、広島、長崎ではアメリカ軍の核攻撃で合わせて43万の非戦闘員が殺された、日本も、70年前に戦ったドイツも、今ではよき友人である、先の世界大戦で亡くなった全ての人々に祈りましょう」
僕たちは当然、70年前に敗戦国という立場であるので、それが疑いようもない前提として戦争を学んだりするのであるが、戦勝国という立場で戦争を語る場合、何が語られるのだろうか。
僕が思うに、悲惨な世界大戦の結末を忘れ去らない取り組みの1つとして、こういう航空ショーが存在しているように思う。今でも大戦期の飛行機や戦車、戦艦を保存し、動態保存しているのは、メンテナンスをきちんとする限り、人間よりも機械の方が長生きするから、そしてそれらが戦争を語るから、という理由がある気がする。それはとてもアメリカらしい取り組みであって、語り部や映像などを重視する日本の取り組みが対比される。どちらが正しいとか正しくないとか、そういう話ではないということだけはさすがの僕にでもわかる。
これも異文化交流というやつなのだろう。