【修善寺】引退間近の185系特急踊り子号に乗り納めた話する
首都圏唯一の国鉄型抵抗制御車両
2021年2月23日追記:2021年3月のダイヤ改正で185系は定期運用から撤退する。
185系は、国鉄が開発した特急型車両である。2019年11月現在では、東京駅を発着する定期列車としては唯一の抵抗制御車であり、走行時に奏でるジェット機のような爆音が忌み嫌われる形式でもある。
一方で僕のような鉄オタには、185系のMT54電動機から奏でられる重厚な走行音は、うるさく感じるよりも懐かしさの方が先にくるのである。京浜東北線に103系が走っていた時も、東海道線に113系や211系が走っていたときも、またそれらがE231系やE233系へと移り変わっても、185系は走り続けていた。
185系は、老朽化にともない、より新型のE257系に置き換わることが発表されている。185系を懐かしむ僕は、最後の乗り納めとして修善寺までの乗り通しを敢行することにした。
今回乗車するのは、東京駅9時00分発の185系による特急踊り子105号である。8時40分に東京駅に着くと、すでにその姿が東海道線のホームにあった。前方10両が伊豆急下田行、後方5両が修善寺行となっており、あわせて15両の長大編成で大変迫力がある。
不便な切符を買うことになった話
僕はえきねっとを使用して切符を手配したのだが、切符については少々特殊で、この特急券1枚で、伊豆箱根鉄道の区間乗車券(三島~修善寺)を網羅している。それだけなら別にいいのだが、降車駅が修善寺であることから、JR東日本管轄駅ではないため、乗車券として個別に購入することができないのである。
何が起こるかというと、最寄り駅~修善寺駅間の乗車券と、東京~修善寺駅間の特急券を買いたいのに、前者の乗車券は、少なくともえきねっとでは手配できない。この場合、(1)最寄り駅から東京(山手線内)に向かい、(2)東京(山手線内)で一度改札を出て、そこからこの乗車券・特急券で入場する必要がある。(1)がJR東日本の駅で、かつ山手線に所属しない駅である場合が大変不便である。
懐かしの185系特急列車に乗り納める
僕は上記のとおり8時40分に東京駅に到着したが、すでに185系はすでに入線していた。15両の長大編成はホーム有効長いっぱいで、その全編成をカメラに収めることはできなかった。
方向幕は懐かしの幕回し式である。フルカラーLEDではなく幕回し式。時代の経過を感じさせる。僕はこの幕回しを見るのが好きだ。例えば始発駅で方向幕を見ていると、幕が回って、僕が知りもしなかった行先や運用があったことを知ることができる。単純に「東京」や「大船」だったなら、普通列車としての運用が想定されていたことがわかるし、「沼津」なら一時期運行されていた早朝の沼津発東京行の特急列車で運行されるのに座席料金不要のお得な普通列車を思い出すし、「大垣」なら言わずと知れた大垣夜行ムーンライトながらを思い出す。
フルカラーLEDではこのようなことはない。コンピュータでパッと表示が切り替わっておしまいである。なんとも味気ない。
車内はこんな感じ。経年もあって内装は少々くたびれている感があるが、シートの座り心地は悪くない。
伊豆急下田側側の10両は分からないが、少なくとも修善寺側の5両編成の指定席は、それなりの混みようである。通路側が埋まっていないことはあるものの、年配の方を中心にほとんどの席は埋まっている。会話が弾んで賑やかだ。
窓の開閉ができる特急型列車は185系だけである。
さて、僕が乗った踊り子105号は、定刻通り9:00に出発した。加速のたびに背中を突き押す感じが、まさに抵抗制御車であることを思い起こさせる。ポイントを渡るたびにガタガタと揺れ、その振動が伝わってくるのもそれはそれでよい。
今回はモハ185-19に乗車。電動車であるためモーターの音がよく聞こえる。外の人々からは騒音だが、僕にとっては懐かしの子守唄のようなものだ。
抵抗制御車の走行音は貴重なので、録音するため一度デッキに出る。ドアは1mほどの幅があり、昇降性を重視していたことがわかる。まぁドアが2枚しかないから結局昇降に時間がかかって普通列車としてのポテンシャルは低かったのだが。
ついでに少し探検してみよう。
国鉄時代から続く「くずもの入れ」の表記。「たばこのすいがら」とか書いてあるのが時代を感じさせる。今でこそ全席禁煙が当たり前だが、かつては喫煙車両なるものが存在したのである。
年季の入った洗面台。ひび割れがセロテープで補修されているが、そのテープですら黄ばんできてしまっている。
大カーブにおいては列車の先頭までがよく見える。鋼鉄製の抵抗制御車による15両編成というのはやはり圧巻である。
東京からは品川、川崎、横浜、大船とターミナル駅に停車し、大船からは30分ほどノンストップで小田原まで走行する。線形に応じた加減速はあるものの、この区間ではMT54電動機の咆哮が大変心地よい。
藤沢駅を通過する際、小田急の通勤型車両としては最古参形式の1つである8000形とすれ違う。写真は和泉多摩川駅付近を走行する同型車両。こちらもこちらでいつまでその姿を見られるだろうか。
小田原駅を出発すると、小田急の特急列車である70000形GSE・スーパーはこね箱根湯本行としばらく並走する。写真は和泉多摩川駅付近を走行する同型車両。1983年に登場した車両と、2018年に登場した最新鋭車両の並走は、見る人が見れば大変趣があるものに違いなかった。
東京駅から1時間20分ほどかけて熱海駅に到着する。熱海駅では、前方10両の伊豆急下田行と、後方5両の修善寺行の解結が行われる。左側には伊豆急行のリゾート21特急電車、ホームを挟んで右手には211系の姿もある。こうして普段あまり見かけない列車を見ると、やはり遠くへ来た感がある。
小田原や熱海あたりに行くなら、踊り子号のような在来線特急列車でもいいと思う。なんとなく風情があるような気がするからだ。あるいは単なる懐古趣味か。熱海であれば、新幹線なら東京駅からわずか30分ほどの距離である。どうも新幹線というのは速くて便利できれいで、それであるからこそ遠くへ来た感がなく、どことなく味気ない。
熱海駅を出発し、丹那トンネルを過ぎると三島に到着する。此処から先は伊豆箱根鉄道の区間に入り、カーブの多い単線区間となる。カーブも多いがおそらく線路の状態もそれなりのようで、明らかに横揺れがひどくなる。これは185系でなくとも変わることはないだろう。
修善寺で駅撮りしつつ考察する
無事修善寺に到着した185系。今回乗車したのは5両編成のC4編成だった。
折返し東京行となるC4編成。
こちらは修善寺観光の帰りに撮影できた、5両編成のC1編成。
サハ185-1という付随車トップナンバーを編成に含んでいる。
修善寺側先頭車のクハ185-2も、制御車としてはトップナンバーに近い。ちなみにこの日、僕はクハ185-1を田町車両センターに留置されているのを見かけたが、走っている姿を捉えることはできなかった。
さて、老朽化もあるため近々引退すると思われるこの185系は、JR東日本のウェブサイトによると、現在110両が在籍している。この110両という在籍数を聞いて僕が思ったのは、思ったより多いな、ということだ。
185系には10両、7両、6両、5両、4両の各編成があり、それぞれの区間の需給に応じて柔軟に編成を充てがうことができる。特に後継となるE257系は5両か9両が基本編成であるため、185系と同様の運用柔軟性をもたせるには、大掛かりな組成変更が必要になるだろうし、それなりの時間がかかるに違いない。
つまり、踊り子号としての引退は直近だけれども、185系という車両自体の全面引退はもう少し未来の話になるのではないか。普通に臨時列車などで姿を見られそうな気さえする。
そんなことを考えながら、ラブライブのラッピングの施された7000系で帰途についたのである。
修善寺駅を出発した、伊豆箱根鉄道駿豆線3000系。クロスシート車でもあり、側面の見た目はかつての113系に似ている。
最後に当日の撮り鉄収穫
修善寺駅で出発を待つ伊豆箱根鉄道駿豆線3000系ステンレス車。こちらもクロスシート車で、側面は211系に似ている。
三島駅を出発する211系。
帰り際、熱海駅で撮影できた伊豆急行の「リゾート21」こと2100系電車。パノラマビューが楽しめる先頭車が人気の列車である。
まぁ何にしても、僕たちは2020年3月のダイヤ改正の情報を待つしかなさそうだ。