【日本最大の五重塔】京都東寺にお参りしようぜ
京都の東寺。またの名を教王護国寺と言われ、名刹の1つとして有名である。しかしそれは、五重塔が堂々としているだけのただの観光名所ではなく、実は大変歴史のある真言密教の聖地にして修行場である。開基は弘法大師空海。宗派は真言宗(東寺真言宗)。
僕の感想だが、例えば蓮華王院三十三間堂は、1000体の千手観音像と1体の巨大な阿弥陀如来が織りなす「数の暴力」的な威厳を感じるが、国宝クラスの巨大な仏像21体で構成される立体曼荼羅は、1つ1つの像から力強い威光を感じる。
東寺はおそらく京都で最も素晴らしい仏教空間の1つだろう。念のためだが、東寺と三十三間堂のどちらが優れているとか劣っているとかいう話ではない。どちらも京都旅行のハイライトとして注目されるべきだ。
京都市街から東寺のアクセスはたいへんよく、近鉄京都線で1駅(京都→東寺)で行くことができる。東寺境内へは、東門または南門から入ることができる。
こちらは南門。
「東寺」の提灯が掲げられ、大変立派な門である。が、1つ不思議なことに気がつくだろう。このような大規模な寺院にあるはずの金剛力士像が設置されていない。金剛力士が配置されるべき空間はしっかり設けられているのに、だ。
おそらく宝物館にあるかか、すでに失われてしまったのだろう。
南門から金堂を見る。境内の散策は無料であるが、後述の金堂や講堂の内部に入る場合は、拝観料として500円が必要である。
また南門から金堂、講堂、食堂といった主要な伽藍は直線的に配置されており、中国密教様式を今に伝えている。
南門から入ると、まず右手に八島殿という神社がある。祭神は東寺の敷地の地主神とされているらしく、弘法大師は東寺建立に先立って、八島殿の神に東寺建立成就を祈願したという。
左手にあるのは八幡社であり、こちらは東寺と平安京を守護する境内神社である。
修行大師像。修行大師は弘法大師の信仰形態の1つであり、四国八十八ヶ所参り(遍路)ができない場合は、修行大師像に参拝することによって、修行大師が参拝者の代わりに遍路を行ってくれるという。
灌頂院東門。徳川家光公が再建したらしい。東寺五重塔も家光公の寄進により再建したものであるが、この他にも家光公は比叡山延暦寺の根本中堂を再建したり、日光東照宮を営んだりしており、理由は不明にしても宗教保護に熱心な将軍であったようだ。
小子坊。南北朝時代の北朝の光厳上皇が政務を執った建物で、現存するのは1934年に弘法大師一千年忌記念事業として新築されたもの。東寺のような古刹は、こうして歴史の生き証人となる。連綿と流れ続けてきた歴史の深さに、僕はロマンを感じる。
東寺に1200年もの歴史があるため見過ごされがちだが、1934年築の建物が状態良く保存されているのも素晴らしいことだ。
高野山奥之院の石碑。霊場高野山はこの石碑の方向に位置し、東寺と並んで重要な真言密教の道場であった。ここで参拝すると、高野山に参拝したのと同じ御利益を授かる。
御影堂には、絶対秘仏にして弘法大師の念持仏と伝わる不動明王像があるというが、御影堂自体が修理工事中であったため、その前堂の弘法大師坐像までのみの拝観であった。
天降石。石を撫でた手で体の悪い箇所を擦ると、その部分が良くなるという信仰がある。
万病ぬぐい。土台の亀のような動物(贔屓という)の上に、尊勝陀羅尼碑を置く。万病ぬぐいの布で贔屓を擦り、その後患部を擦ると、傷病が治るという。
三面大黒天を祀る大黒堂。大黒天の他、毘沙門天、弁財天の三尊のご利益があるという。
鐘楼。
食堂。東寺の中でも大きな規模を持つ堂の1つ。内部は撮影禁止だが、十一面観音像、釈迦三尊(釈迦如来、文殊菩薩、普賢菩薩)、四天王像が配置される。
ここからは東寺のハイライトである講堂、金堂、そして五重塔を拝観する。拝観料は500円。東寺は高さ55mを誇る五重塔が有名で、その威容は圧倒的なものがある。
そして講堂内部の立体曼荼羅、金堂内部の薬師三尊像は、得も言われぬ荘厳さと静謐さをたたえた宗教空間である。ぜひ拝観料500円を払って間近に見てほしい。運が良ければ、水鳥が瓢箪池の岩場で優雅に獲物を狙っている様にほっこりすることもあるだろう。
まずは講堂。講堂内部は撮影禁止である。
講堂内部には巨大な大日如来像を中心に、いわゆる金剛界曼荼羅や胎蔵曼荼羅などで表現される大日如来を中心とした絵掛のように、如来像、菩薩像、不動明王を中心とした天部の護法善神の神々が配され、それらの像の配置自体が曼荼羅をなしている。絵ではなく実体的な曼荼羅。これこそが東寺の真言密教(東密)の集大成である。
弘法大師はここに、極めて前衛的な構想を成そうとした。絵掛けではなく、実物の仏像をもって曼荼羅をなそうというのである。それがこの立体曼荼羅である。現代なら曼荼羅の世界をリアル仏像で表現した結果wwwとかいってまとめサイトに上がってそうですらある。
この立体曼荼羅は、絵掛曼荼羅のとおり、如来部については大日如来像がその中心をなす。それに阿弥陀、不空成就、阿閦、宝生の各如来が脇を固める。これらの5の如来を五智如来という。浄土系仏教で重要視され本尊ともなる阿弥陀如来も、真言密教の曼荼羅の世界においては大日如来の脇侍の1つとなる。如来部の5像は室町時代から江戸時代にかけての作であるが、阿弥陀如来の頭部は平安時代の作である。
如来部に向かって左手にある明王部は、巨大な不動明王(平安時代作・国宝)を中心に、軍荼利明王、大威徳明王、金剛夜叉明王、降三世明王を配する。不動明王は大日如来の化身であるため、明王の中でも中心となる。背後が赤々と燃えている像容も、その憤怒の表情も、像自体の大きさも相まって迫力があり、思わず頭を下げ手を合わせてしまう。
如来部に向かって右手にある菩薩部には、金剛波羅蜜、金剛薩埵、金剛宝、金剛法、金剛業の5菩薩像がある。上記の五智如来、五大明王に対し、これらの菩薩はこの東寺以外に作例がなく、ある意味これが弘法大師の立体曼荼羅構想のオリジナル部分であるのかもしれない。
さらに多聞天、持国天、増長天、広目天の四天王の他、梵天、帝釈天が配置されている。名前を聞いたことのある仏像も多いため、単純に仏像オールスターとしても楽しめる。
素晴らしいのは、この21の仏像がすべて平安時代の作であり、国宝も多く含まれているということだ。これだけ迫力あり、かつ1000年以上も前の歴史ある仏像を間近に、しかもケース越しでなく見られるというのは、大変素晴らしいことだ。
続いて金堂。金堂内部も撮影禁止である。
金堂の建物自体は桃山時代に建立されたもので、国宝である。金堂内部には、薬師三尊(薬師如来、脇侍として向かって右手に日光菩薩、左手に月光菩薩を従える。各像ともに重要文化財)が配置されている。薬師如来像の足元には、護法善神である十二神将の姿もある。
最後に五重塔へ。東寺五重塔は高さ55mを誇り、現存する木造塔のなかで最も高い塔である。現存するのは徳川家光公の寄進によるもの。家光公、宗教建築の再建にお金使い過ぎじゃないですかね。現代に生きる僕たちにとっては大変ありがたいが。
内部は原則非公開だが、如来像や菩薩像が安置されているという。
瓢箪池で羽を休める水鳥。
瓢箪池越しに五重塔を望む。
正直、これだけ貴重な仏像が間近に見られて拝観料500円というのは安い気すらする。つまりはコストパフォーマンスに優れているわけなので、ぜひ訪れてほしい。日本の宗教美術に圧倒されることだろう。
もし行くか行かないか迷っている人がいるのであれば、僕は声を大にして言う。迷っているくらいなら行ったほうがいい。何度も訪れる機会がないのならなおさら。何なら他の観光地を一部キャンセルしてでも!