「阿夫利」は、恵比寿駅から歩いて5分くらいのところにある和風柚子ラーメン店である。
僕が「阿夫利」の名を知ったのは、会社の近くのコンビニエンスストアで、その名を持つカップラーメンが売っていたからである。
外出がない日はおにぎり2個とカップラーメンという組み合わせで昼食をとる僕は、この125円の小さなカップラーメンに興味を引かれた。僕は柚子の風味が大好きである。それが和風ラーメンと調和し、しかもそれが日清食品から商品化されている。なるほど、これがハズレであるはずがない。
期待以上の味に満足した僕は、是非「阿夫利」の実際の店舗で和風柚子ラーメンを味わいたくなった。調べてみると、中目黒、六本木、麻布十番などにも店舗があるようだ。立地からして、いわゆる「中華料理の麺料理を日本向けにローカライズしたラーメン屋」ではなく、「少々意識高めやハイソな層をターゲットにした創作系和風ラーメン店」である印象を受ける。
そしてその時はすぐに訪れた。外出先から帰社するときの帰り道で、僕は恵比寿駅で乗り換える必要があった。ちょうどいい。昼時には少々早いが、恵比寿の「阿夫利」に行ってみようじゃないか。
店舗外観。いわゆる赤ちょうちんなどは一切ない。ともすれば見落としてしまいそうですらある。
今回は柚子醤油ラーメン(1080円)を選択。全体的に価格が高めであるとは思ったが、やはりそういう客層を相手にしている、というメッセージでもあるのだろう。
恵比寿店の店内はカウンターのみで、20席ほどはある。昼前だったが半分くらいは埋まっており、サラリーマンに混じって外国人の観光客の姿もあった。英語のメニューが準備されているあたり、旅行ガイドブックとかで紹介されているのだろう。
食券を渡すと、チャーシューの種類と油(鶏油)の量を聞かれる。チャーシューは炙り、角煮、鶏の3種類から選べる。鶏を選択できるのも、おそらくイスラームにおけるハラールの対応の1つで、宗教的な事情で豚肉を食せない人々にも配慮されているのだろう。こうした取り組みは大変好感が持てる。
鶏油の量は普通か多め。困ったら普通で。
柚子醤油ラーメン(1080円)、鶏油普通、炙りチャーシュー。
スープを口に含むと、豊満な柚子の香りがいっぱいに広がる。とてもあっさりしたスープで飲みやすく、ごくごく飲めてしまう。塩分摂り過ぎ注意。炙りチャーシューは肉それ自体の旨味がしっかりと凝縮されており、さらにそこにスープの柚子の風味が合わさって、油っぽさを一切感じない。
麺は細麺で、おそらく何かの風味を加えてある。よくよく見ると黒い粒が時折混ぜ込まれているのだが、これも何かの工夫なのだろう。普通のラーメンよりも細い麺で、太さだけで言えば、いわゆる博多ラーメンのそれに近い。大きな主張をすることもなく、しっかりとスープを引き立ててくれる。一方でスープを吸収するのも早いようで、食べ終わるころには結構なボリュームになっている。満腹感もあっていいのだが、麺自体の舌触りも味わうのであれば、麺かためでオーダーするのも良いかもしれない。できるかどうかは知らんけど。