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とある底辺喪男の社会評論

現代社会の様々な問題点や、政治、経済、金融、教育のあらゆる社会的分野について、好き勝手に評論する若干意識高めのブログです。ただし、論者は底辺喪男です。

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MRJは失敗プロジェクトかもしれない

www.nikkei.com

 

三菱重工業は、開発中の、国産初の次世代小型ジェット旅客機(MRJ)の納入延期を発表した。納入延期は5回目となる。当初の予定では、2011年に初飛行、2013年にローンチカスタマーである全日空に納入することを発表していたが、度重なる開発遅延とトラブル、そしてアメリカにおける飛行証明の取得などに時間を要したことから、今回の発表においては、2018年半ばの納入を目標としているという。

YS-11の夢をもう一度

三菱重工業がかつて発表した国産旅客機YS-11の夢をもう一度、「日本の空を日本の翼で」という思いがあったのだろう。三菱の国産旅客機開発のニュースは、大変の大きな反響を呼び、その期待はとても大きいものであった。YS-11の開発成功は、戦後ずっと航空機開発を禁じられてきた日本が、ようやくその航空技術力が世界レベルまで戻したことを意味し、おそらくはそれと同じ意味で、MRJは高揚感と期待感をもって受け入れられたのだった。(YS-11は、その後の部品供給などのアフターサービスや販売戦略の不備から、商業的には成功と言いがたいものがあったが。)

YS-11については開発成功し、各航空会社に納入する段階までは進んだ。しかしMRJは、少なくとも2016年末時点で、納入は1年半もあとになるといい、しかもそれは不確定な状況である。

MRJは失敗しつつある

僕の判断では、MRJは、プロジェクトとしては失敗しつつある状態にあるといえる。様々なプロジェクトにおいて、何かしらのゴールが設定されるものであるが、MRJにおけるゴールは、少なくとも納入することではなかったはずだ。当然ながら、各航空会社に納入し、それが大きなトラブルなく商業飛行を継続し、開発費用を確実に回収する、というところまで実現できて、はじめてプロジェクトとしては成功となるはずだ。

航空機開発というのは、開発期間に時間がかかればかかるほど、そのコストを増していく。その巨額の開発費用を、各航空会社に販売することで、数年~数十年かけて回収するのであるが、リリースが遅れた分膨れ上がったコストは、航空会社への販売機体数を増やすことでしか回収することができない。よって、MRJ損益分岐点は、当初の想定より相当に高くなるはずである。

それならば、販売機数を増やせばよいのであるが、実際のところ、70~90人乗りの小型旅客機には、実績ある多くの競合機種が存在する。MRJの優位点というのは、プラット・アンド・ホイットニー社の低燃費新型エンジンを採用することによる、飛行回数あたりの燃料消費量の低減と、その静音性にあったのだが、それはあくまで開発開始時点の話であり、2018年にもなれば、他社の競合機種が、同じエンジンを採用した機種をリリースすることが予想される。すると、いかに名だたる三菱重工業といえども、航空機メーカとしては新興企業で飛行実績がないのであるから、信頼性という面において、採用される可能性が下がるのである。航空会社の危機管理的な判断としては、安全性を第一として、たくさんの実績のあるボンバルディアエンブラエルのRJ(リージョナルジェット:地域間輸送用小型旅客機)を採用するのが自然であるからだ。

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エンブラエルERJ-175。MRJの競合機種の1つ

導入する側からすると、他にも様々な懸念材料がある。部品供給などのアフターサービスに問題ないだろうか。アメリカのスコープ・クローズ問題の存在もある。スコープ・クローズとは、アメリカ国内の航空会社どうしの運用協定のことで、運用する機体のサイズにおいて、席数上限(76席)と最大離陸重量制限(39トン)が定められている。アメリカのスカイウェスト航空は、88人乗りクラスのMRJ90を100機+オプション100機を導入予定のお得意様であるが、MRJ90はスコープ・クローズの制限を超えてしまっている。両社はスコープ・クローズが緩和される想定で商談をすすめていたため、その販売交渉が停滞しているのである。 

それでもMRJは飛ぶ

僕は、日本政府も大いに肩入れしているところもあるので、結果としては、おそらくMRJの商業飛行それ自体は可能だと思っている。おそらく(主に税金によって)三菱重工業への支援が行われるだろう。ただその飛行によって、どれだけの開発費用が回収可能で、そうでないものがどれだけあるか。そして、このプロジェクトの責任者はどのようなかたちでその責任を取るのか。あるいは、そもそもプロジェクトの成功の定義を変えてしまい、「商業飛行させたから成功」という「新しい判断」をするだろうか。ANAやスカイウェストが発注取り消しの判断をすることはあるだろうか。あるいは起死回生の一手が見つかり、2018年半ばの納期には間に合うだろうか。

僕は以前、MRJの大きな模型を見たことがある。とても流麗で美しい機体であった。日本の翼が世界を飛ぶのは、停滞している日本にあっていろいろ期待してしまうところである。航空ファンの僕としても、事の推移に注目していきたい。

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