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とある底辺喪男の社会評論

現代社会の様々な問題点や、政治、経済、金融、教育のあらゆる社会的分野について、好き勝手に評論する若干意識高めのブログです。ただし、論者は底辺喪男です。

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日銀のETF買い入れは、市場経済主義の否定である

金融・経済

 

今年、日銀がETF(上場投資信託)買入の強化を実施してから、株価は「安定」しているようにみえる。日経平均は概ね16,300~17,400円くらいの間で推移しており、長期で見た日足は上昇トレンドにあるように思える。ということは、日本経済の先行きも明るいのだろうか。僕にはまったくそうは思えない。国内景気は相変わらず縮小しているし、消費者は生活防衛のため購買を控えている。足元の景気は改善していないのに、日経平均株価は上昇している。

「下がらない」株式市場はおかしい

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株価は経済のバロメータと言われる。投資家が株を買う理由は、その株を発行する株式会社が今後成長していくにあたり資金を必要としており、かつその成長が実際に見込め、その売買益なり、配当利回りなりのリターンがあるからである。そして株式市場は、そのような株の集合体であるのだから、上昇する株式相場には成長見込みがある、と言い換えることもできる。経済理論的にはそのとおりであるのだが、東京株式市場を見る限り、実際はそうではない。日本経済の先行きは明るくなっていないのにもかかわらず、株価は上昇している。というより、下がらない。

この「下がらない」というところが大変よくないのである。

本来、株の価格というのは、その株の発行会社の将来の収益性と、その株式の価格変動率(ボラティリティ)で決まってくるものである。収益性が悪化した株式は売られて価格が下がるし、そうでない株式は買われて株価が上昇する。その価格の上昇と下落が、車の両輪のように存在してはじめて、株価は形成されるのである。そしてまた、その株価の上昇と下落の集合体が、株式市場なのである。

これは心臓の拍動のようなもので、株価の下落は心臓の左心室が膨張している状態であり、肺静脈からの血液を溜め込んでいる状態である。また、株価の上昇は心臓の左心室が収縮し、上下大動脈を介して全身に強力な血圧をもって血液を送り出している状態である。
株価の変動が心臓の拍動であるならば、株価が下がらないということが意味するのは、心臓が収縮したままの状態であるということである。肺静脈からの血液は左心室に入ることができず、左心室内にも血液が枯渇している状態である。心臓は膨張があることによって収縮する。同じように、株式市場も下落があって上昇する。そして、心臓が収縮(あるいは膨張)したままの状態は心停止と定義され、場合によっては生物の死を意味する。同じように、株式市場が下落することなく上昇し続けることは、株式市場の死を意味する。そしてそれは、市場経済主義のもとになされる健全な投資の否定であるようにしか思えないのだ。

本来株価は、収益性の悪化や割高感によって、下落するときには下落するものであるし、収益性の改善や割安感によって、上昇するときには(ほうっておいても)上昇するのである。それはその株式が投資的観点からみてどれだけ魅力的かという判断でもある。投資家が安いと思えば買い、それによって株価は上昇する。同じように、投資家が高いと思えば売り、それによって株価は下がるのである。

今の日経平均は割高である

もっとも単純な比較として、ドル円相場との比較を考えてみると、1ドル104~105円程度の水準で、日経平均株価は17,000円超の水準となっている。過去を遡ってみると、2013年後半~2014年頃のドル円は100~105円くらいで推移しており、その時の日経平均株価は14,000円くらいであった。また、17,000円という水準は、2015年初頭の水準で、その時のドル円は120円前後であった。よって、日経平均17,000円に対し、ドル円105円というのは、明らかに割高なのである。割高なのにもかかわらず、そして景気も回復しておらず、財政再建もおぼつかない国の平均株価が下がらないのである。

さて、そんな健全な投資家諸君にとっては悪いことに、日銀がETF買入を行うことにより、株価は下がらなくなってしまった。日銀がETFを買入れると、各証券会社はその注文に合わせてETFの組成銘柄をリバランスしなければならず、その一環で、市場に流通している株式を買い付ける必要がある。その大量の買い注文が、買い上がりを発生させるのだ。これはすなわち、下がったら買うということができなくなることを意味する。さらに、市場から買い付け可能な株式発行数が減少していき、品薄感からさらに株価が上昇してしまうのだ。

投資家は、(しかたなく)割高な水準で買わざるを得ないのだ。その分売買益は減少してしまい、収益が悪化してしまう。これは売り方も一緒で、先物取引の売りや空売りによって利益を上げる投資家も、高値で売り玉を建てても下がらないので、やはり収益が悪化してしまう。そうかといって、買い方も、割高な水準で買っている以上、さらなる上昇は期待できず、多少の売買益が確保できたらすぐに売却する。

このような相場で安定して収益をあげられるのは、1~10円程度(数ティック)を一瞬で抜いて売買益を上げる自動売買取引システムアルゴリズム取引)くらいのものである。

日銀は株式市場を殺してしまう

さらに厄介なのは、日銀という、それ単体で1日の全売買代金の数%に相当する300~700億円を誇るビッグプレイヤーが、売買益を確保することを意図せずに買っていることである。本来の市場参加者=投資家の姿としては、売買益を上げるために、売る←→買うのサイクルを必ず行うものである。しかし日銀は、売買益をあげることは意図せず、株式市場への資金流入(を通じた企業への直接投資=金融緩和)を意図しているのであるから、「売る」ことを行わないのだ。日銀のETF売りは、すなわちこれまで日銀がすすめてきた量的・質的金融緩和の否定になるから、売ろうと思っても売れないのだ。買うだけの存在…これがどれだけ株式市場を混乱させてきただろうか。

かくして、日本の株式市場は死んでしまった。投資家にとっては買うことも売ることもできなくなってしまったし、そこに蠢いているのはアルゴリズム取引と日銀、そしてたまにGPIFの影も見える。何より、株価が経済のバロメータとして信用に値しないものとなってしまった。そんな市場に魅力が、取引を行う価値があると思われるだろうか。世界中の投資家が、日本の株式市場を見捨てることになりはしないだろうか。そうなればいよいよ株式市場の直接金融の媒体としての姿は失われ、企業は資金が調達できなくなって経営破綻するか、あるいは体力のある会社は、海外市場に上場し資金調達を模索することになるだろう。

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